8ヶ月

赤ちゃんが母乳から免疫をもらえるといわれている

時期がすぎ、私たちもブラジルに来てから8ヶ月が経った。

スーツケース12個と少しの家具で始まった異国でのシンプルな暮らしは

物がない分,日々の繰り返しの中のでささやかな幸せを見つけることが多い。

経済の発展中のブラジルでは山のように物を買っては捨てるひと、

食べ物を腐るほど余らせるような場面を見ることも多い。

お金さえ出せばここでも便利で日本にいたときのような暮らしを

する事も出来るけれど、私はそんな風にお金を使うつもりはない。

まぁ子供が一杯いるからそんな無駄もできないんだけど、それなら

とことんシンプルな暮らしを楽しむほうが良いと私は思っている。

ブラジルは自国の経済保護のために外国からの輸入品に

60パーセントもの関税をかけているため、普通に手に入るものや

スーパーではブラジル産の物がほとんど。日本のように世界中から

手頃な値段でなんでも手に入ると言う環境ではないし、物の品質も

そんなにいい物は期待出来ない。

そんな風だから料理をしようと思うと自然と地産地消になる。

けれどその食品も暑い気候と未発達の冷蔵技術のせいか

添加物が多いのも特徴でそういうあれこれを

避けながら新しいここでの食卓を紡いでいる。

そういう時に物を言うのはやっぱり手作りの力だと思う。

なければ,作るの発想はなんとありがたいことか。

そして自分が作った物のおいしさはやっぱり格別。それがいつしか

味だけでなく思い出になるというおまけつきだからなおさら愛おしい。

とはいえ,時々はおむすびが手軽に買える日本が恋しくなるし

肉食メインの真夏のブラジルの台所では一体何を食べたらよいのか

わからなくなることもあった。

「あぁ、納豆に冷や奴、薬味のいろいろに、刺身にお蕎麦。枝豆に

甘くて美味しいとうもろこし。なんて日本食ってすばらしいのだろう。」

そう何度も懐かしい思いがしたものだった。

それでもなんとかここでブラジルらしく,我が家らしく食卓を

紡ぐ挑戦はいまでも続いている。

 

最近我が家から車で2〜3時間かかるサンパウロにある

日本人街リベルダージというところに初めていった。

そこは横浜中華街の日本バージョンのような街。

ここのスーパーには納豆やらできたて豆腐やらレンコン、餅、

日本のスナック菓子等何でも売っている。そして中華点心なんかも

売っていて中華食材も手に入るアジア人には嬉しい場所だ。

私たちも懐かしいお蕎麦屋さんやラーメン屋に見とれながら

街を歩き、お店に入れば日本の食料品にすっかり興奮して

できたてブラジル産の豆腐にお揚げに納豆にと買い込んでしまった。

なんと便利な!!

こんなお店がうちの近所にあればなぁと

口惜しい気持ちがしつつも、こういう特別があるからこそ

日々の暮らしがもっと楽しくもなるのだとも思った。

その日はもちろんうちに帰ってから念願の柔らかい豆腐のみそ汁。

納豆に御飯,自家製ぬか漬け。

「あぁ,最高!日本食万歳!」みんな大感激で完食したのだった。

 

ブラジルの日本食は結構いいかげんで、味噌も売ってるがなぜか

「あかみそ」とかいてあってあきらかに「しろみそ」とかいてある

味噌よりも白い。どう考えてもラベルを間違えてパッキングしている。

という事で赤味噌が欲しいときは「しろみそ」を買う事にしている。

そして小豆も売ってるがなぜか「イセタン」と書いてある。

「Isetan」ってデパートじゃないの?って首を傾げる。謎だ。

番茶もあるけど「山本山」と書いてある。たしか海苔の会社じゃなかったっけ?

なんか知ってるような知らないような紛らわしい名前がついているのである。

といいつつも、手に入る小豆も味噌も番茶も我が家のかかせない

アイテムとなり台所に収まっている。ありがたや、ありがたや。

 

また小豆は細長く日本の物とは随分違う。米だって細長い物じゃなくても

日本とは匂いも味も全然ちがう。醤油だって添加物が入ってないものを買っているが

原材料は大豆、塩、トウモロコシ。所変われば品変わる、味も雰囲気も全然ちがう。

だから料理も変わるし,美味しく作る方法もかわる。

空気も気候も周りにいる人も違うので食べたい物も変われば欲しい味も

変わる。はじめはこんなおかしな匂いの米や、細長くて固い小豆や

うまみのない醤油にがっかりした物だったけど,今ではこれがブラジルの

風土に適しているここで出来た物だと思いとてもしっくりきているように

思える。

海外で暮らし始めると,はじめは自分の中に元々ある味覚や音や嗅覚や

センスやいろんな物と外の世界が対立する事がある。

その異物のように感じた外国の諸々も時間とともに自分の中で

熟成されて気がつけばいい塩梅になっていく。

日本人として変わらない物もありながら前よりもっと

世界に対して許容をしてる自分を感じる。

それはなかなか悪くない。

今ではみそ汁ももちろん我が家の定番だが、それと同じくらい

フェジョアーダというブラジルの黒豆の煮込み料理が定番になっている。

どちらも日常を感じる味になっている。

 

こんな風に色んな味が混ざりつつ,自分のルーツを大事にしつつ

台所での試みはまだまだ続く。

また最近は中華料理や韓国料理、タイ料理のスパイシーさなどが

アジア人の私には熱帯ブラジルで食べるのにとても合うように

感じている。

日本食はスパイスを用いない。水の料理。ひたひたと、ことことと

優しくゆでる、蒸す、浸す,煮る。穏やかで繊細な波動だ。

一方ブラジルははじけるような油の料理。スパイスはあまり使わないが

じりじりの太陽にジャングルのような自然を目の前に

自然とワイルドな料理を作りたくなる。食べたくなる。

じゅーじゅー焼く肉、ざっと強火で炒める。生のサラダを

がしがし食べる。

そんなわけで、じゃっじゃと炒める中華料理やスパイスの利いた

エスニック料理はすごくおいしく感じられるということに気がついた。

でもその材料は簡単に手に入らないので,やはり何でも自家製でというのは

お決まりだ。

自家製グリーンカレーペーストでタイカレーを作る。

自家製中華麺を作ってラーメンを食べる。スープだって鶏肉を食べた残で

がらスープをストックしたりする。最近はそれにキムチも加わり

アジア料理大満喫。

あかちゃんをおんぶしながら台所で料理する料理する。

そうしてもちろん夫の母国ドイツ料理もそこに加わる。

そしてイタリア系の友達、イギリス人、フランス人、スペイン人と

友達の輪が広がればどんどん料理も広がっていく。

こうして世界中の料理を作って食べているのはとても楽しい。

どこにもすばらしい文化と智慧が詰まっていて、美味しく無駄なく

健康的な料理が沢山ある。

肉食だろうと菜食だろうと全ての歴史と智慧と文化に乾杯だ。

 

こうして私の台所はますますグローバル化している。

そうしながらも毎日御飯とみそ汁は欠かさない。

日本とも世界ともつかない

菜食とも肉食ともつかない

生食とも加熱食ともつかない

混沌とした我が家の日々の食卓の中に

私らしさを見つける。

ブラジルに来て8ヶ月。

気がつけば我が家のぬか漬けはしっくりと床がなじみ

いい塩梅となっていた。

 

 

 

 

 

2 コメント

  1. tsubasa

    日登美さんの料理教室がある時はまた是非行きたいな!
    すごーくすごーくパワフルな料理とレシピが沢山つまっていそうだし、
    何より楽しい時間が楽しい話が聞けそうだもの!
    わぁー楽しみ楽しみ♪

  2. 日登美

    是非是非!