日曜日の風景

日曜日の朝、毎週恒例のオーガニックマーケットに買い出しに

出かけるため、まだ寝ていたい自分に喝をいれて布団からでる。

ブラジルは初冬。

こんな時コーヒーの香りに包まれながら自分のバッテリーが

起き上がるのを待てればなんとなく格好つくのだろうな、と

思いながらコーヒーが飲めない私はカーテン越しに犬達が餌を待っている

気配を感じつつを既に朝焼けの終わった空を渋い顔で見つめる。

子供たちが一人またひとりと起きて来る。

寝起きで既にテンションの高い子、朝ご飯の気になる子、

取りあえずハンモックに座って昨日と今日の境界線を越えたという

ことを納得しようとするように佇む子。やっぱりまだ起きてこない子。

気配と気配が合わさりながら一日が始まる。

どんよりと眠そうな空の日曜の朝。

けれどブラジルの天気は朝にどんよりと曇っていても、気がつくと

あっという間に機嫌がよくなり見事な晴れ間をみせてくれる事も多い。

今日はどうだろう?と天気の心配をしていながらも、結局どっちにしたって

洗濯機をまわさない訳にはいかないのだということに気がついて

急いで山のような洗濯物を洗濯機に放り込む。

「ウ〜ン」と言いながら洗濯機も動き出す。

洗濯機でさえ日曜の朝は億劫そうに働くものなのだ。

 

そうこうしてるうちに眠気も覚めて買い物の支度をする。

さて、そろそろ行こうか。

 

平日と違ってすいている高速を走るのは気持ちいい。

わたしもここで運転が出来ればいいのになぁとふと思う。

「早く免許を申請しないといけないんだよなぁ」と頭によぎり

急に休日気分は興ざめする。

よりによって日曜日にブラジルの役所仕事なんて世界で一番

めんどくさい事の三本指に入りそうなことを思い出したくない。

気分を取り直しゆっくりと景色を見ながら重たそうに沢山の実をぶらさげる

アボカドの木を見つけては誰が収穫するのか、それとも収穫しないのか、と

言った私にはおよそ関係のないことに思いを巡らしてみる。

いつもと同じ道を走りながら運転をする主人となんと言う事もない会話をしつつ

気分は再びいつもの日曜日に戻って来る。

走行しながら20分ほど走ってるとマーケットのやっている公園に到着する。

野生のカピバラがそこここで見られるこの公園

「日曜日、オーガニックとカピバラと」

なんだか一句詠めそうな牧歌的な雰囲気である。

 

やや出遅れたのか既にマーケットはにぎわっている。

小さい規模で数件しかないマーケットだけどここでは

大根に里芋、小松菜、かぼちゃにしめじにらなど

日本の野菜をオーガニックで買う事ができる。

 

ちらほらと聞こえて来る日本語と日本人客とちょっと

ブラジルの発音になってる「caqui(柿)」やそのままの「小松菜」

の名前に微笑ましさを覚えつつ、やや郷愁にひたる。

「小松菜はどうやってたべますか?」と聞いているブラジル人の奥様を

横目に「あ〜小松菜ね。知らないんだぁ〜」と心の中でかすかな

優越感を抱いたりもする。

ブラジルという海流と日本という海流が私の心の中で潮目のように

合流するこのマーケットのカオス。

 

ほぼ一週間分の野菜と果物に加え、

前回作ったキムチのおいしさに味をしめ、白菜を4個も買い

これまた前回あっという間になくなってしまったタイカレーペーストを

作るべくレモングラスにコリアンダーにと買い占め

気持ちがいいほど大量の野菜を手に家路に着く。

 

一日3食の食事を6人分,離乳食、おやつも時々作って

台所は休む暇を知らない。

意気込んで買い占めた野菜たちを四苦八苦しながら冷蔵庫に

しまい、よせばいいのに今日もその上三度の食事以上に料理を

しようとする自分にあきれるのだった。

 

昼ご飯前の微妙な時間、今日は機嫌を取り直さなかったのか

外は雨が降り出している。

買い物から帰ってきた騒々しさも、天気の悪い日に閉じこもる

子供たちのやかましさも、雨が全てを吸い込んでにわかに静けさと

落ち着きが訪れる。

そのタイミングを計ってか否か、それとなく主人が「やろうか。」

と言って本日の夫婦共同作業タイカレーペースト作りが始まった。

 

ひたすらににんにくの皮をむくわたし。スパイスを計量する主人。

ライムの皮。こぼれたクミンシード。しょうがの香り。

薬剤師のように黙々と作業は進む。

部屋中にアジアの香りが広がる。

にんにくの香り、ターメリックの黄色、ブレンダーは回る。

しとしとと寒空に降り注ぐ冬の雨のブラジルに

東南アジアの暑く湿った人懐っこい風が吹く。

真夏の太陽をつれてくるような香りが全てを吹き飛ばす。

これだから料理はやめられない。

 

一言も言葉らしい言葉は交わさないが阿吽の呼吸が心地よい。

カレーペーストの工程を共有しているだけなのに

こんなに夫婦関係が穏やかで刺激的で親密に感じられるのは

なぜだろう。

時折目を合わせてはその進み具合に、できばえに「うん」と

うなずき合う様はどこか神事のような趣もある。

それぞれに進む一つの作業、一つの工程が二人の手によって

なされ、時々確認され、あるときは一つの鍋で,あるときは

一つのボールに、あるときは瓶に詰められ出来上がる。

この工程は何かに似ているような。

こうして今日も大きな瓶にビッチリ詰まったペーストができ

あがる。私たちの達成感はクライマックスに至る。

 

アジアの香りを漂わせ、カオスと化した台所。

シンクの辺りに散らかったにんにくの皮に、ターメリックの黄色が

しみついたヘラ、心の穏やかさとは別に戦のあとのような有様を眺める。

どこか自分を見るようで親近感がわく。

気がつけば昼をまわり、おなかをすかせた子供たちが

朝の残りの蒸したジャガイモをほおばりながら

ポルトガル語でふざけあう。

半年前には見られなかった光景なのに

もうすっかり前からここにあったような気がするのは

このしっとりと全てをなじませる雨のせいなのか。

 

瓶をパントリーにしまって、カオスを片付けてしまうと

台所はいつもの顔をみせる。

床に転がる4個の白菜に今日は出番は回ってこないようだ。

ふたたびアジアの残香漂う台所に立つ。

さて急いで昼ご飯を用意しよう。

落ち着きと、騒々しさと達成感と刺激的な香りを振りまく

日曜日はこうして過ぎていく。

 

7 コメント

  1. Michelle

    素敵な週末ですね。美しい風景が目の前に広がるよう。是非レシピを!

  2. kitagata

    わ〜!なんとまるで。そこにいるかのようなライブ感伝わる文面。。。

    ある日の日曜日。
    地球の裏側。
    匂いまで伝わってきそうな
    タイカレーペースト。

    今日発売のクーヨンを読み、コンドミニウのプールに毎日入る日登美さん一家を拝見した後のブログでは、もう初冬なのですね!

    今日の東京は蒸し暑く、まさにタイカレー日和です。笑

  3. kitagata

    追記

    とても羨ましい夫婦関係、、結婚八年経ちますがご飯を一緒に作ったのは一、二度くらいしかなく、このブログを読んで、ああ、我が家もそんな夫婦間いーなー♡なんて、いまからでも遅くない、一緒にオーガニックスーパー行って(ぐるっぺ?笑)、調味料からのカレー作りたいなー☺︎と、思っちゃいました!!

  4. aki

    こんにちは。
    ずっと前の本ですが、クーヨンのおかあさんのための自然療法を読みました。とても良い本ですね!!何度も読みました。
    日登美さんは現在、どのような自然療法を生活に取り入れていますか?

    また、本によくマッサージをすると書いてありましたが、
    どのようなマッサージをされますか?おすすめのBookやマッサージがあれば
    教えて下さい。

  5. 日登美

    レシピ、アップしますね、もう少々お待ちくだされ。
    日本は蒸し暑い梅雨か〜タイ料理ぴったりですね!

    調味料作りでも夕飯作りでも、夫婦で料理いいもんですよ〜
    新婚気分で是非どうぞ=)

    自然療法は今も変わらずホメオパシーとお手当です。
    野口整体の愉気法を自己流でとりいれ、あとはマクロビオティックの手当てや
    東城百合子さんの自然療法のような基本的な事をとりいれています。
    おすすめの本は大森一慧先生のお手当本と東城百合子さんの自然療法本。
    マッサージは昔習ったベビーマッサージを子供に、マクロビオティックを勉強していた時に習った経絡マッサージを大人と大きい子に。経絡を覚えておくととても役に立ちます。以前オーガニックベースでビューティーコースをやった時にお教え下のですが。またチャンスがあればクラスやりたいですね。

  6. aki

    お返事有難う御座いました。
    日登美さんはホメオパシーは独学ですか?
    レメディは使ってみたいけれど、初心者が使うと危険というのもインターネットであったりして不安もありまだ一度も使ったことがありません。

    経絡マッサージ、良いですね~是非いつかまたクラスして頂きたいです!!
    お灸や鍼とは違いますよね???

  7. michelle

    日登美さん、レシピ楽しみです!ありがとうございます!コメントにあった東城百合子さんの本さっそく注文してしまいました♪