盆生まれ

日本では夏休みまっただ中の8月ににこちらでは

新学期がはじまる。

初めてブラジルに来たときも日本では夏休みに入ったばかり

だったのにもう学校に行かねばならずあの年は

夏休みを損した気分になったのだった。

あれから一年。今年もとうとう8月になり

あっという間の冬休みが終わって新学期が始まったのに

いつもより嬉しそうにしているのはお盆生まれの次女。

次女はお盆うまれだから誕生日には来てくれる友達が

今まで殆どいなかった。というか盆に誕生日会を開こうと

思った事は殆どなくたいてい家族で慎ましく誕生を祝ってきた。

けれどようやく日本の裏側ブラジルで日の目をあびる時が来た。

「こんな日が来るなんて!」地球を半周してよかったと

いわんばかりにウキウキしてる。

新学期はじまってからは「誰を呼ぼうか?」

「誕生日ケーキはチョコがいいからね!」などなど

その話で持ち切りだった。

そんな風にして新学期始まってそろそろみんな

エンジンがかかってきましたよと言う感じの8月下旬に初めて

ブラジルで次女の誕生日パーティーを開く事になった。

吟味して吟味して仲のよい友達を何人か呼ぶ事にした。

それだってやはり女の子は一苦労。

「あの子とあの子はあんまり仲良くないんだよね〜でも

あかりはあの子好きだから呼びたいんだよね〜どうしよっか?」

などなど5年生ともなると子供世界の人間関係も複雑らしいのは

ブラジルでも同じようだ。

それでもどうにかこうにか仲良しさんに招待状を作り

私はバースデーケーキのリハーサルをさせられ、ランチの

メニューを提示しなんとか合格サインをもらった。

みんなでやるゲームはこの国の人は知らないであろう、

パン食い競走のおかしバージョンと飴食い競争に決定しており

普段めったに買ってもらえないキャンディーの色々に

既に弟達は興奮しつつ「誕生日っていいなぁ!」という

空気は家族全体に広がっていった。生真面目で入念な次女は

そんな浮き足立った弟らに喝をいれつつ、あくまで主役は私だ!

と主張せんばかりにお菓子の類いを厳しく取り仕切り

自分はゲーム用のキャンディーを袋に詰める作業や、

ゲームのリハーサルまでやった。

前日には運動会の前夜のような緊張感に包まれ
眠れなくなるほどどきどきしながらいよいよその日を迎えた。

当日は気持ちのいい晴天。朝早くから来てケーキ作りを手伝ってくれる

友達がきてにわかに舞台裏は動き出す。

たった今冬が終わったばかりなのにどうやら今日は

真夏日になりそうだ。

お手伝いのはずの友達も主役の次女も仕込み半ばで気がつけば水着に

着替えてプールに飛び込む。準備は入念な割にその辺は適当

らしい。

そんなこんなをしているうちに続々と友達が到着する。

近所の家の子供たちもちらほら集まって来る。

こうして流れるように総勢十数名の子供たちが群がって

誕生日会は始まっていた。

春とは思えない夏の天気と次々と元気にプールに飛び込む子供たちの

姿に日本も今夏休みだったなぁと思い出した。

けれどお盆の雰囲気はここでは全く感じられない。

次女の誕生日とお盆はいつもセットだったから

お盆の無い国にいるというのはなんだか変な感じだった。

何もかもがぐるっと姿を変えてしまっているのだ

ということに改めて気がつく瞬間でもあった。

リハーサルのかいあって、ランチも好評,ゲームの

飴食い競争やパン食い競走は顔を粉まみれにした子供たちが

「もう一回もう一回!」とせがんでくるほど

ブラジルの子供たちにも大人気だった。

一通りはしゃぎきったところでバースデーケーキに行く前に

仕込んでおいたクッキー生地をもってきてみんなで型抜きして

焼いてお土産にした。こういうちょっとした手の仕事は女の子は

大好き。次々とプールから飛び出して水着姿でクッキーを作る

様子はさすが南国ブラジルという感じだった。

どの子も一杯遊んで喋って、女子達のかしましさもかわいらしく

真夏の太陽のようにきらきらした時間のなかではしゃぎ回る

次女の思い切りの笑顔がまぶしい誕生会だった。

今までと違う音、違う空気、違う光の

なかで懐かしく思い出す11年前のあの瞬間。

 日も暮れかけた頃いよいよほぼ1キロの粉で作った

特大チョコレートケーキの登場でパーティーはクライマックスを

迎える。

ブラジルの誕生日ソングを皆に歌ってもらって思い切り

ロウソクを吹き消すとまた一つ大きくなったんだってことが

ひしひしと感じられた。

「お一つどうですか?」お迎えにきた親御さん、物見に

来てくれたご近所さん、周りにいる全ての人にケーキを振る舞う

のがブラジルスタイル。まるで家の上棟式の餅まきのように

おめでたい気持ちをふりまき分かち合う。

生まれて初めての盛大な誕生日パーティーはこうして無事に幕を

閉じた。

片付けが終わって一息つく頃にはもうすっかり辺りは暗くなって

次女はハンモックであっという間に寝てしまった。

いつもは長女の下、双子の上、という微妙なポジションで

主役になれる事の少ない次女という立場。私も二番目の子供

だからなんとなく気持ちはわかる。

けれどとうとうブラジルで初めて迎えた主役の座。

輝く太陽と子供たちの笑い声に包まれた次女の日焼けし

いきいきとした笑顔を見ながらこれからもいつまでも

自分の人生の主役でいてほしいと願った。

お盆だろうと次女だろうと

こうして一人一人に燈がともる誕生日。

その光をあびた次女の顔が忘れられない一日だった。

 

 

 

 

3 コメント

  1. yoshi

    スゴイ!日本でなくても、何でも満喫できることは素晴らしいですね!本人はもちろん、日登美さんにとっても思い出に残る誕生会ですね!
    日登美さんのレシピ本から作った料理が、知人や家族に好評です☆
    東京はすっかり涼しくなり、8歳の息子が「ごぼうの梅煮」食べたいと言ってきました。毒素がたまってるんですかね…「ごぼうカツ」にすると、私と息子は奪い合いで食べてます!

  2. 日登美

    yoshiさんありがとう!
    レシピ本が活躍しているようでとても嬉しいです。
    どんどん作ってみんなで食べてくださいな〜
    確かに日本はこれから秋。秋の始まりは夏の間にとりすぎた陰性さ(水分や果実などの甘みとか、クーラーの冷えなどもね)を体からだしておくと今後の冬が過ごしやすくなりますよ。それにはごぼうの梅煮は最適です!さすが息子さん体で分かってらっしゃるのかしら?すごいなぁ。
    そんなわけでごぼうや小豆等を是非食卓に取り入れてみてくださいな。
    よい秋の始まりを!

  3. つばさ

    小豆かぼちゃと丸い野菜大活躍の今日この頃。
    今年は秋らしい毎日です。

    あかりちゃんおめでとうございます。
    もう二桁の年齢なのですね。

    少しずつ子どもたちの世界が増えていきますね

    私も次女の気持ち受け止めてあげなきゃな。