Figurinha

ワールドカップ直前のブラジル。

道を歩けばどの店にもブラジルの緑と黄色の旗が翻り

スーパーにいけば応援グッズとおぼしき

やはり緑と黄色のラッパやメガホンなどが

すでに盛り上がりの序章を奏でている。

男の子はほとんどみんな黄色いブラジルのユニフォームをきて

遊んでいるがうちの双子は本人達の希望で

日本代表のブルーのTシャツに

ドイツ代表の白地のTシャツを着ている。

私はてっきり皆と同じブラジルのユニフォームを

欲しがると思っていたのに、意外にも双子くんにも

日本人としてのプライドがあるらしい。

そしてそれと同じくらいドイツという国に親近感を

抱いているらしい。

僕たちの国、日本とドイツ。

それはつまり私たち家族のことなんだろう。

誇らしげに日本とドイツのTシャツをきて

二人対になってブラジルチームに立ち向かう姿が

愛らしい。

ちなみに一番おちびは一応ブラジル人なので

一人前に黄色いブラジルチームのTシャツをきている。

青、白、黄色。三色のユニフォームが揃った。

日本、ドイツ、ブラジル。

今ではそのどれもが我が家のような気持ちがするのだ。

 

子供たちは小さい子も大きい子も数人集まれば

「オレ〜オレオレオレ〜!」といいながら何処かでみた

かっこいい選手のマネをしながらサッカーゴールもない

草っ原で日が暮れるまでサッカーに明け暮れる。

子供の模倣とはすばらしいもので近所の子供なんて

まだまだおちびのくせにゲームの中で一人前にファウルをし

言い訳をし、やってない!と言い張ってあの独特の

大げさな身振り手振りで「そんなばかな!」というジェスチャー

まで再現し大人顔負けの白熱したプレーをみせてくれる。

あまりの白熱プレーにフェアな日本人プレーヤーの双子は本気で

「あいつらずるいんだぁ」泣いて帰ってきた事さえある。

たかが子供のサッカーとあなどれない。

さすがサッカー大国ブラジル。

けれどこうやって世界の広さを知るのもいい勉強になるのだろう。

 

子供がこれだけお熱なのだから大人だって黙っちゃいない。

大事なプレーがあるときは大学も休みになったりしているらしい。

サッカーを中心に仕事や学校のスケジュールが組まれてしまうのは

きっとブラジルだけなのではないかと思う。

 

そして今一番ホットなのが「フィグリーニャ」とよばれる

各国のサッカー代表選手の写真である。

「アウブン」とよばれる一冊の本にワールドカップ出場国全ての

ページがあり、そこに写真シールをはって本を完成させる。

チョコか何かのおまけについているものもあるのだけど

主には文具店にて1レアルで5枚一組の写真を買う事ができる。

どうしてこういう類いのものはいつも文具店で取り仕切られているのだろうと

懐かしい疑問がふと頭をよぎる。

うさんくさい文具にまぎれて子供が小銭を握りしめフィグリーニャを

買いに来る、はたまた大人がポンと20レアルを出して大人買いをする姿は

いつか何処かで見た事があるような光景だ。

 

 

このフィグリーニャ、全部を完成させようと思うと総勢600人とも

700人ともなる各国のサッカー選手の写真を集めなければならない。

しかも5枚一組の中にいつも別の人が入っている訳ではないので

ダブるカードも沢山出て来る。

そのだぶったカードはヘピチーダと呼ばれ

みんなそれを元手に友達と交換をしてこの本を完成させていく。

もうかれこれ数ヶ月この作業が続いていて学校ではみんな

フィグリーニャの話題で持ち切りだ。

学校の帰りにはみんなこの本を広げてヘピチーダを交換する。

それがまた子供だけでなく、大人も一緒になって、

はたまた学校の先生も一緒になって熱心にフィグリーニャ交換を

しているのである。

まがりなりにも、我が子達が通っているのは

ブラジルのシュタイナー学校だ。

シュタイナー学校といえばキャラクターグッズや一般のメディアとは

縁が遠い存在として日本では良く知られていると思う。

ところがどっこい、ブラジルはひと味違う。

フィグリーニャはサッカーがお国柄のせいか大歓迎。

もちろん反対する人もちょっとはいるようだけど、先生だって

「フィグリーニャ大歓迎ですよ!」と宣言した。

普通なら「学校に関係ない物は持ってこないでください。」と

言われそうなものだが、流石ブラジル。

先生曰く「フィグリーニャを通して自分の学年以外にも

生徒同士が多くの人と交流をしているのは大変よろしい。」

ということらしい。

なるほど。

そういう考え方もあるか。

価値観ってのは本当に様々だ。

ともあれそんなおふれが出たものだから、学校だから、と控えめに

していた我が子達もこのフィグリーニャ交換にいよいよ

熱心に参加するようになった。

 

実は私はこういうカード集め等が苦手で、日本にいるときは

あまり子供にやらせていなかった。

そういう自分の子供時代にはビックリマンチョコというのがあって、

熱心にカードを集めた物だったのだけど。

と子供が知ったら文句を言われそうだが。

こうして子供たちに我が家で初のカード集めを許してみると、

「いやぁそりゃぁ楽しいよね。」とついこちらも夢中になってしまった。

5枚一組のカードを買って家で袋を開けるあの瞬間。

車の中で袋をすかして中を見ようとしたり、もうこの際開けちまえ!

という衝動に駆られたりしつつ帰宅の道を急ぐ車内の中のあの興奮。

いよいよ家に着いて鞄を放り出して兄弟頭をくっ付け合って

フィグリーニャの袋を開ける。

「あ!やった!ブリリャンチ!(キラキラのカードをこう呼ぶ)」

「え?みせてみせて〜」

「なんだぁ、こいつもう一杯持ってる〜」

(これ!外国の選手に向かってこいつはないでしょ!と突っ込みたい気持ちをぐっとこらえる)

などなどもう文具店に入ってフィグリーニャを手にしたときからの

ドラマティックな事と言ったら、一レアルをかける価値は十分にあるといえるだろう。

そして私はしばし懐かしのビックリマンチョコカードの思い出に浸りながら,

「今の時代はワールドカップかぁ、ちょっとかっこいいなぁ」なんて思うのだった。

 

 

しかもこのカード、700人近い人を集めるにも関わらず

子供たちは袋に入った写真をひとたび見ただけで

「あ,これ持ってる!」

「あ!このひともってないやつだ!」と分別するので面白い。

彼らはどうやら700人近い見た事もない外国人プレーヤーの顔を

すっかり覚えているらしい。

ちょっとした神経衰弱じゃないか!とおもいつつ

フィグリーニャを通して子供の観察力の鋭さが鍛えられるのも

悪くないと思ったりする。

子供はどこでどんな形で勉強をしているかわからないものだ。

色んな経験を通しての若い脳みそは発達していくんだなと

まじまじ思う。

 

けれどもちろん歓迎される知恵だけではない。

我が家の隣に住んでいるおじさんがよくフィグリーニャを

買いにいくので、近所の子供たちはみんなその家で

おじさんを待ち受けて自分のおこづかいを渡して買ってもらう。

まるでマフィアの麻薬売買のようである。

まぁそこまではいいのだが、あまりのフィグリーニャ欲しさに

子供たちは朝となく、昼となくおじさんの家に押し掛ける。

(あれ、やっぱり麻薬の売買みたいじゃないか。。)

カランコロン!!と門についてる呼び鈴を日曜の朝6時半頃から

鳴らしまくり

「Inaci!(イナーシオ!)」(おじさんの名前)としつこく呼ぶ。

出てこないとまた

カランコロン!!

野生の猿には餌付けをしてはいけないというが,7歳以下の子供にも

餌付けはしないほうがよさそうだ。

近所の5歳の子供がそんな風にするもんだからうちの双子も一緒になって

「Inacio!」と叫んでいる。

(こら!イナーシオって呼び捨てしない!)

(こら!君たちはもう9歳でしょ!人の家に行っていい時間と

行けない時間くらい分別しなさい!)

ここに来てからというもの、こうして近所に頭を下げっぱなしでもある。

とはいえ、気のいいブラジル人。

子供が愛されるブラジルではみんな大変よくしてくれて、

もう片方のおとなりさんは子供たちにわざわざフィグリーニャを

買ってくれるし、近所のおじさん達も

「うちにフィグリーニャ交換にこないかい?」と子供たちを

誘ってくれる。

子供も大人もご近所も知らない人も老いも若きもサッカーで

フィグリーニャでつながっていく様をみると、あの学校の先生が

言ってる事もまんざらではないなと思うのだった。

 

ワールドカップ会戦間近。

未だ我が家のアウブンは完成していない。

あと100人を切った様だが開幕中に完成できるのだろうか。

既にぼろぼろになりつつあるアウブンを引っさげて

今日も双子は学校にいった。

そして今日の帰り道もきっとあの怪しげな文具店に1レアルを握りしめ

フィグリーニャを買いにいくことになるのだろう。

 

2 コメント

  1. toquita

    面白い!ワールドカップ開幕直前に
    開催地での臨場感あふれるお話でした。

    ブラジルのシュタイナー学校の先生、
    四角四面でなくて、いいですね。

  2. haruko

    うふふ、フィグリーニャ交換楽しいですよね。サンパウロの日本人学校はさすがに持って行けないので、学校やバスの中で子供達は何を交換するかメモをして、次にあえる時迄とっておいて交換する、という気の長くなるような恋文のような?作業をしていますよ。街のショッピングモールでは交換会が自然発生的に開催され、子供はもちろんおじさん達もわんさか。同じ数だけ交換するものが無い場合、等価交換になるように、持っているカードと数をあわせて交換するという、ブラジル人にしては??しっかりしてるなあっていう面白い交換方法をしてました。お父さん達もお小遣いはたいてるからでしょうかね!!^^