Sítio その3 乳搾り

田舎での一日はあっという間で怒濤のように夜が来て、

焚き火を味わう間もなく子供たちは眠りについた。

ようやく静かな火を囲んで大人はしばし談話にいそしみ

眠りこけるともう既に朝だった。

恐るべし子供たちはすっかりエネルギーチャージされ早朝から

かけずり回っている。また一日が始まった。

そんな姿を遠目で見ながら「一体あの体力はどこから来るのか?」と

溜息と微笑みを交えて友人と見守る。男の子のお母さんってのは

体力勝負なのだ。

元気な子供たちと同じく田舎の朝は早い。

早速近所のおばさんが自分の家の牛の乳を搾る時間だと

いうので参加させてもらう事になった。学校の体験学習の乳搾り

とは一風違うリアルな体験。

赴いてみるとおばさんは既に庭にいる子豚と鶏にえさをやり終えて

いて、次は牛に餌をあげる為のサトウキビを畑から刈り取り

担いで帰ってきたところだった。

静かな佇まいにマッチョな風貌、言数少なく手際よく

力む事無くそれでいてスムーズに事を運ぶ恐るべし達人おばちゃん。

この色の黒いがっしりした体格のおばちゃんは何でもやる。

あるときはクリスマスか?と思わせるほど大きなバナナの木を

一本かついで道を歩いていたらしい。

田舎の女性は強くて働き者なのだ。

そして家畜の世話から畑の事まで良く知ってるという知恵者でもある。

そんな知恵者でありながらとにかくタフなこのおばちゃんは

大きな体に締まった筋肉とふくよかな乳房をぴちぴちの服に

押し込めて既に50歳は越えていそうなのに

セクシーさを忘れない辺りブラジル人女性らしくて印象的だった。

家畜の世話とておしゃれは忘れない。

豚や牛や鶏の為に朝6時頃はにサトウキビ畑からサトウキビを

とって来て鉈で一口にカットする。その様の手慣れた事。

高級中華料理店の包丁さばきのようにぬかりなく

子気味よい音が辺りに響く。

 

穫れたてのサトウキビを刻みながら何も言わずにザクザクと皮をむき

おばちゃんはおもむろにサトウキビを私達皆に配ってくれた。

朝ご飯前の子供たちは夢中でするめのごとくしゃぶりつく。

甘くて元気な味がしたたる。

いよいよ牛のお母さんに餌を持って乳を絞りにいく。

これまたこなれたワザで牛の後ろ足を縛り、ささっと乳房を洗い

あっという間におばちゃんは乳を絞りだした。

「じゅっじゅっ」と勢いよくアルミの缶にお乳が湯気を出して

集まる。

子供たちはチョコレートパウダーの入ったアルミのカップを手に

順番を待つ。

おばちゃんは次々子供のカップにお乳を搾ってくれる。時々子供たち

が一緒にしぼってみてもおばちゃんのような勢いで乳を搾る事は

なかなかできない。乳搾りは見るとやるとでは大違いなのだ。

暖かな牛の体温で湯気の立ち上るミルクがカップを一杯に

満たしていく。

できたてほやほやのホットチョコがひんやりした田舎の朝に心地いい。

私はお乳をチョコレートなしで飲んでみることにした。

牛乳の概念が覆る。これはおっぱいだと感じた。

おっぱいは牛乳とは別物なんだ。これは大発見だった。

これは確かにあかちゃんにあげる為のものなんだとはっきりわかったのは

自分も授乳中だからなのだろうか。

癒されるような、満たされるような滋養の味がする。

お母さんの愛を感じるような乳の味。美味しいような

美味しくないような味。確かに栄養がたっぷりな感じがする。

これで牛が育つというのが感覚でわかる。

暖かな自分のおっぱいの味を想像しながら目の前の牛のお母さんの

おっぱいを味わいながら不思議と私達が別物に思えなかった。

私達がお乳を搾ったあとには、お母さん牛にサトウキビの御飯をあげて

次は子牛がおっぱいを飲む。そうするとまたお乳がよく出るらしい。

そんなシステムだって人間とおんなじだ。

お乳を搾らせてもらう時も、お乳を引っ張るとおっぱいが張ってくる

ような感じでおっぱいがでる。子牛がおっぱいを飲んでる様子も

まるで我が子と同じじゃないか。

そう思っていると子牛に触発されたのか我が家のあかちゃんも

私のおっぱいにしがみついておっぱいを飲み始めた。

牧場で牛の親子と共に「あぁ、お宅もですかぁ」という感じで

授乳するのもなかなか悪くない。妙な親近感が漂う牛小屋の朝。

 

昨日の祭りの牛の肉料理といい、この牛のお乳といい

本物の食べ物には命をはっきりと感じたのだった。

肉も,ミルクも命でできているんだ。

ブラジルに来て初めて食べた穫れたてのマンゴーやバナナとも

ある意味で質は違わない。

植物か動物かの違いで命の生々しさはどちらも一緒なのだ。

一言で言えば「生々しい」。

命はちょっと気持ち悪いくらい生々しいのだった。

それを食べるという事が気持ち悪くもあり、気持ちよくもあり。

生きるってことはどっちもあるってことなのかと思ったのだった。

そんな命が枯れる事無く一年中わき起こっている国が

ここブラジルなのだ。

 

ともあれ人生初の乳搾りも無事に終え、あっという間の

一泊二日を終え、電気のない家から家路に着いた。

楽しかったいろいろな思いではさておき,早速洗濯物で

てんやわんやとなりあっという間に夜になった。

その夜は双子と末っ子、我が家の男の子3人と一緒に久々に

バスタブにお湯をためて入ることにした。

もう次は10歳になる双子はいつまでこうしてお風呂にはいって

くれるだろうか?

皆気がつけばうんと大きくなってお風呂はとても狭くかんじられた。

しばしそんな感慨に耽っていると双子の一人が私のおっぱいをしげしげと

見てふと何かに気がつく。

「ママ、そのおっぱいあと2個同じのがついてたら牛になれるよ。」

「。。。」

「いや、ならなくていいけど。。」

そんなオチが用意されていようとは。

シーチウでの様々な思い出を残して今日も夜が更けていく。

牛のお乳と私のおっぱい。数は違うけどわたしもまた

生々しい命を与えるお母さんなのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3 コメント

  1. yoshi

    久司先生の本(マクロビの理論本)を時々読みますが、日登美さんのブログを読んでいても、いろいろ考えさせられますね~!貴重な体験、羨ましいです!
    日本は栗の季節です。無農薬の山栗を買ってゆでました。自然の恵みってありがたいですね。栗ご飯サイコー!

  2. aki

    こんにちは。いつもブログを楽しみにしています。今日は直接ブログの内容とはリンクしないのですが、日登美さんは今も毎日?アシュタンガ・ヨガをされていますか?始めるのにやはり年齢は気にするものでしょうか?またアシュタンガ・ヨガはハードで辛いでしょうか…。何かアドバイスを頂けたらと思います。

  3. 日登美

    akiさん。
    アシュタンガヨガについてですが、今は毎日の練習はしていません。時々時間を見つけて自分の体力と赤ちゃんのご機嫌を伺いつつやってるかんじです。でも以前は毎日やっていたので体のどこが固くなってるというのがわかるので、必要だと思うポーズを時間のある時にやったりしてストレッチしたりして、今は焦らずゆっくりのペースでやっております。
    アシュタンガはハードだと言われていますが、やり方によるのではないかと思っています。沢山のポーズをやらなくてもしっかり呼吸をしてゆっくり進めれば問題ないのでは?と思います。年齢は気にしなくていいと思いますよ。やりたい時にやりたい事をやる。それだけで良いと思う。まずは興味がおありでしたら、その自分の心に従ってやってみたら良いと思います。それで嫌ならやめればいいし、楽しければ続ければいい。是非そうやって自分の心が喜ぶ事をやってくださいな=)それもまた一つのヨガだと私は思います。